最終更新: (労働基準法37条・38条の2〜4に対応)
みなし残業(みなし残業代)とは——残業代は出ない?よくある誤解を整理
結論: 「みなし残業(みなし残業代)」とは、一定時間分の残業代をあらかじめ固定額で毎月支払う「固定残業代」の通称です。制度そのものは適法ですが、「みなし残業だから残業代は一切出ない」は誤解で、みなし時間を超えた残業分は別途支払われる必要があります。また、名前が似た「みなし労働時間制(裁量労働制など)」とは別の制度です。この記事で、混同されやすい言葉を整理します。
30秒でわかる「みなし残業」
| 正体 | 一定時間分の残業代を固定額で先払いする「固定残業代」の通称(定額残業代とも) |
|---|---|
| 残業代は出る? | みなし時間の範囲内なら追加なし。超えた分は別途必要(0になるわけではない) |
| 何時間でも定額? | いいえ。みなし時間を超えた分は別途割増賃金が発生する |
| 「みなし労働時間制」と同じ? | 別物。裁量労働制など「みなし労働時間制」は労働時間の数え方の制度 |
| 迷ったら | 給与明細・契約書を手元に労働基準監督署の総合労働相談コーナーなどへ |
みなし時間の範囲に収まっているかは残業代計算ツールでみなし時間・実残業時間を入れて概算できます。仕組みの詳細は固定残業代とは(確認すべき2点)もどうぞ。
1. みなし残業とは——「固定残業代」の呼び方のひとつ
「みなし残業」「みなし残業代」という言葉は、法律上の正式な用語ではありません。実際に指しているのは、あらかじめ決めた一定時間分の残業代を、その月の実際の残業時間にかかわらず固定額で支払う仕組み——いわゆる「固定残業代」です。求人票や給与明細では「みなし残業」「定額残業代」「営業手当(◯時間分の時間外を含む)」など、さまざまな呼び方をされます。
たとえば「みなし残業45時間分」と定められていれば、その月の残業が30時間でも45時間でも、固定額が支給されます。呼び方は違っても、一定時間分の割増賃金を先に固定額で払うという点は共通です。制度そのものは労働基準法で禁止されているものではありません。
2.【誤解その1】「みなし残業だから残業代は出ない」は誤り
もっとも多い誤解が、「みなし残業を払っていれば、いくら残業させても追加は不要」というものです。そうではありません。実際の残業時間がみなし時間(固定残業代の対象時間)を超えた分は、別途、割増賃金を支払う必要があります。みなし残業は「一定時間分を先払いしている」だけで、残業代そのものを免除する仕組みではないからです。
たとえば月給30万円・みなし残業45時間分の人が、ある月に60時間残業したとします。このとき、超えた15時間分の残業代が別途必要になります。当サイトの計算エンジンで試算すると、この不足額の目安は約34,439円です。一方、実際の残業がみなし時間(45時間)の範囲内であれば、追加の支払いは発生せず不足額は0円です。
| 月給30万・みなし残業45時間分 | 実際の残業 | 別途必要な額(目安) |
|---|---|---|
| みなし時間内におさまった | 45時間 | 0 円 |
| みなし時間を超えた | 60時間 | 約 34,439 円 |
前提: 年間所定休日120日・1日8時間(1か月の平均所定労働時間 約163.3時間)、固定残業代(みなし残業代)を基礎から除いて算定、超過分はすべて法定時間外。当サイトの計算エンジンによる概算・目安です。実際の額は所定労働時間・算定基礎に入る賃金の範囲・みなし残業の内訳により変わります。
3.【誤解その2】「みなし残業=何時間でも定額」ではない
誤解その1と裏表の関係ですが、みなし残業の対象時間を超えて働けば、その超過分は別料金(割増賃金)になります。「みなし残業45時間分」という設定は、45時間までの残業代を先に払ってあるという意味であって、それを超えたら追加が発生しない、という意味ではありません。
また、みなし残業の対象時間が実態としてこなせないほど長く設定されている場合は注意が必要です。実際に働かせることのできる時間外労働には、労働基準法36条の上限規制(原則として月45時間・年360時間など)がかかります。みなし残業の金額と対象時間は、給与明細や雇用契約書で「◯円=◯時間分」と示されているかを確認しておくと安心です。
4.【誤解その3】「みなし残業」と「みなし労働時間制」は別物
言葉が似ているために混同されやすいのが、「みなし残業(固定残業代)」と「みなし労働時間制」です。この2つは別の制度です。
| みなし残業(固定残業代) | 残業代の払い方の話。一定時間分の割増賃金を固定額で先払いする仕組み(この記事で説明) |
|---|---|
| みなし労働時間制 | 労働時間の数え方の話。実際の時間でなく、あらかじめ定めた「みなし労働時間」働いたものとして扱う制度 |
「みなし労働時間制」には、外回りなどで労働時間を把握しにくい場合の事業場外労働のみなし労働時間制(労働基準法38条の2)や、専門業務型・企画業務型の裁量労働制(38条の3・38条の4)があります。これらの制度でも、みなし労働時間が法定労働時間を超えれば時間外の割増賃金が必要ですし、深夜・休日の割増賃金は別途支払われる必要があります。
裁量労働制での残業代の扱いは裁量労働制に残業代は出ない?で、年俸制の場合は年俸制に残業代は出ない?でくわしく整理しています。
5. 給与明細・契約書で確認しておきたいこと
- みなし残業が金額と「何時間分」かの両方で示されているか(例: 「みなし残業◯円=◯時間分」)
- 通常の賃金部分とみなし残業部分が給与明細で分かれて記載されているか
- 実際の残業がみなし時間を超えた月に、超過分が別途支払われているか
- みなし残業の対象時間が、実態としてこなせる範囲か
これらは、みなし残業(固定残業代)が有効に機能しているかを自分で確かめるための一般的なチェック項目です。当てはまらない点があるからといって直ちに違法というわけではなく、個別の判断が必要です。確認したいポイントの詳しい解説は固定残業代とはをご覧ください。
6. 次に確認したいこと・相談先
- みなし時間内かを計算したい — 残業代計算ツール(みなし時間・実残業時間で試算) / 残業代の早見表
- 仕組みと確認すべき2点 — 固定残業代とは(明確区分性・対価性)
- そもそも残業代の計算方法は? — 残業代の計算方法(3ステップ) / 割増率まとめ
- みんなの残業代はどれくらい? — 残業代の平均額(統計から見る目安)
- 一般的な相談先 — お近くの労働基準監督署内の総合労働相談コーナー / 厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」などの公的窓口
よくある質問
- Q. みなし残業(みなし残業代)とは何ですか?
- あらかじめ決めた一定時間分の残業代を、実際の残業時間にかかわらず固定額で毎月支払う仕組みで、「固定残業代」「定額残業代」の通称です。「みなし残業45時間分」といった形で支払われます。制度そのものは労働基準法で禁止されているわけではありません。
- Q. みなし残業だと残業代は出ないのですか?
- 「みなし残業だから残業代は一切出ない」は誤解です。実際の残業がみなし時間の範囲内なら追加はありませんが、みなし時間を超えた分は別途、割増賃金を支払う必要があります。みなし残業を払っていれば何時間残業させてもよい、という制度ではありません。
- Q. 「みなし残業」と「みなし労働時間制」は同じものですか?
- 別のものです。「みなし残業」は固定残業代の通称で残業代の払い方の話、「みなし労働時間制」は事業場外みなし(労基法38条の2)や裁量労働制(38条の3・38条の4)のように労働時間の数え方の制度です。名前が似ていますが仕組みが異なるため、契約書で自分の労働条件を確認しましょう。
- Q. みなし残業の時間数に上限はありますか?
- みなし残業の対象時間そのものを直接制限する規定はありませんが、実際の時間外労働には36協定や労働基準法36条の上限規制(原則として月45時間・年360時間など)がかかります。対象時間が実態としてこなせないほど長い場合は労働時間管理の面で問題になりえます。
- Q. みなし残業について確認したいときはどこに相談すればよいですか?
- 労働条件や残業代の一般的な相談は、労働基準監督署内の総合労働相談コーナーや厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」などの公的窓口で受け付けています。無料・匿名で相談でき、給与明細・雇用契約書・就業規則を用意しておくとスムーズです。
参考にした情報(一次情報・取得日2026年7月22日)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第37条 — 時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務。laws.e-gov.go.jp(e-Gov法令検索)
- 労働基準法第38条の2〜第38条の4 — 事業場外労働のみなし労働時間制、専門業務型・企画業務型裁量労働制(「みなし労働時間制」の根拠条文)。laws.e-gov.go.jp
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」割増賃金不払・裁判例 — 固定残業代では通常の賃金部分と割増賃金部分を判別できることが必要(明確区分性)。check-roudou.mhlw.go.jp
- 金額の目安は当サイトの計算エンジン(労働基準法37条・施行規則19条の算定式に基づき、みなし残業代を基礎から除いて算定)による概算です。
※みなし残業(固定残業代)が有効かどうか、追加の残業代が支払われるべきかは、契約書・就業規則・実際の勤務状況をふまえた個別判断です。制度は変わる可能性があるため、最新の内容は厚生労働省・お近くの労働基準監督署でご確認ください。