給料の「引かれるお金」がぜんぶわかる

最終更新: (労働基準法37条・関連裁判例に対応)

固定残業代(みなし残業代)とは——仕組みと、確認しておきたいポイント

結論: 固定残業代(みなし残業代)とは、一定時間分の残業代をあらかじめ固定額で毎月支払う仕組みです。制度そのものは適法で、それ自体が悪いものではありません。大切なのは、①割増賃金部分がはっきり区分されているか②みなし時間を超えた残業分が別途支払われるかの2点を給与明細や契約書で確認しておくことです。

30秒でわかる 固定残業代

とは一定時間分の残業代を、実際の残業時間にかかわらず固定額で毎月支払う仕組み(みなし残業代とも)
適法か仕組み自体は適法。禁止されているわけではない
確認①通常の賃金と割増賃金(固定残業代)部分が明確に区分されているか
確認②実残業がみなし時間を超えた分は別途支払われる
計算上の注意基礎時給を出すときは固定残業代を月給から除いて計算する

自分の残業代がみなし時間の範囲に収まっているかは、残業代計算ツールでみなし時間・実残業時間を入れて確認できます。

1. 固定残業代とは——「◯時間分」をまとめて先に払う仕組み

固定残業代(みなし残業代)とは、あらかじめ決めた一定時間分の残業代を、その月に実際どれだけ残業したかにかかわらず固定額で支払う仕組みです。たとえば「固定残業代 45時間分」と定められていれば、残業がその月に30時間でも45時間でも、固定額が支給されます。

求人票や給与明細では「みなし残業」「定額残業代」「営業手当(◯時間分の時間外を含む)」などと書かれることもあります。呼び方はさまざまですが、いずれも一定時間分の割増賃金を先に固定額で支払うという点は共通です。

2. 固定残業代は適法——ただし「確認すべき2点」がある

固定残業代の仕組みは、労働基準法で禁止されているものではありません。制度自体は適法です。そのうえで、裁判例では、固定残業代が有効な支払いと認められるために次の2つが必要とされています。難しく感じるかもしれませんが、要は「残業代として、いくら分がはっきり払われているか」という話です。

①明確区分性通常の労働時間の賃金部分と、割増賃金(固定残業代)部分とを判別できること。「基本給に含む」だけで内訳が不明だと区分できているか問題になりえます
②対価性その固定額が、時間外労働の対価として支払われていると認められること

最高裁の判例(日本ケミカル事件・平成30年7月19日、医療法人康心会事件・平成29年7月7日など)でも、割増賃金部分とそれ以外を判別できることが必要とされています。個別のケースが有効かどうかは、契約書・就業規則・実際の勤務状況をふまえた判断になります。

3. みなし時間を超えたら、超えた分は別途支払われる

固定残業代でよく誤解されるのが、「固定残業代を払っていれば、いくら残業させても追加は不要」という点です。そうではありません。実際の残業時間が固定残業代の対象時間(みなし時間)を超えた分は、別途、割増賃金を支払う必要があります。

たとえば月給30万円・固定残業代45時間分の人が、ある月に60時間残業したとします。このとき、超えた15時間分の残業代が別途必要になります(基礎時給の計算では固定残業代を月給から除いて算定)。当サイトの計算エンジンで試算すると、この15時間分の不足額の目安は約34,439円です。一方、実際の残業がみなし時間(45時間)の範囲内であれば、追加の支払いは発生せず不足額は0円です。

月給30万・固定残業代45時間分実際の残業追加で必要な額(目安)
みなし時間内におさまった45時間0 円
みなし時間を超えた60時間約 34,439 円

前提: 年間所定休日120日・1日8時間(1か月の平均所定労働時間 約163.3時間)、固定残業代を基礎から除いて算定、超過分はすべて法定時間外。当サイトの計算エンジンによる概算・目安です。実際の額は所定労働時間・算定基礎に入る賃金の範囲・固定残業代の内訳により変わります。

4. 給与明細で確認しておきたいチェックリスト

固定残業代は仕組みとして問題のあるものではありませんが、内容があいまいなまま運用されているとトラブルのもとになります。次の点を、雇用契約書・就業規則・給与明細で確認しておくと安心です。

ここに挙げたのは、固定残業代が有効に機能しているかを自分で確かめるための一般的なチェック項目です。当てはまらない点があるからといって直ちに違法というわけではなく、個別の判断が必要です。

5. 次に確認したいこと・相談先

よくある質問

Q. 固定残業代(みなし残業代)とは何ですか?
あらかじめ決めた一定時間分の残業代を、実際の残業時間にかかわらず固定額で毎月支払う仕組みです。「みなし残業代」「定額残業代」とも呼ばれます。制度そのものは労働基準法で禁止されているわけではありません。
Q. 固定残業代は違法ですか?
仕組み自体は違法ではありません。ただし裁判例では、有効と認められるために、通常の賃金部分と割増賃金部分が判別できること(明確区分性)と、時間外労働の対価として支払われていること(対価性)が必要とされています。区分があいまいだったり、みなし時間超過分が別途支払われない運用は問題になりえます。
Q. みなし時間を超えて残業したら追加の残業代はもらえますか?
実際の残業がみなし時間を超えた場合、超えた分の割増賃金は別途支払われる必要があります。固定残業代を払っているからといって、みなし時間を超えた残業まで支払わなくてよいわけではありません。給与明細でみなし時間と実残業時間を照らし合わせて確認しましょう。
Q. 固定残業代があると残業代の計算はどう変わりますか?
固定残業代は割増賃金部分にあたるため、基礎時給を計算するときは月給からこれを除いて計算します。そのうえで、実残業がみなし時間を超えた分について基礎時給×割増率×超過時間で追加分を求めます。みなし時間の範囲内なら追加の支払いは発生しません。
Q. 固定残業代について相談したいときはどこに聞けばよいですか?
労働条件や残業代の一般的な相談は、お近くの労働基準監督署や厚生労働省「労働条件相談ほっとらいん」などの公的窓口で受け付けています。給与明細・雇用契約書・就業規則を用意し、固定残業代の金額とみなし時間、超過分の扱いを確認するとスムーズです。

参考にした情報(一次情報・取得日2026年7月22日)

※固定残業代が有効かどうかは、契約書・就業規則・実際の勤務状況をふまえた個別判断です。判例や制度は変わる可能性があるため、最新の内容は厚生労働省・お近くの労働基準監督署でご確認ください。

本記事は一般的な制度の解説です(2026年7月時点。労働基準法・厚生労働省の公表資料および裁判例に基づく概算・目安)。個別の固定残業代が有効かどうか、追加の残業代が支払われるべきかは、契約内容や勤務状況により異なります。個別のご相談は、お近くの労働基準監督署や厚生労働省「労働条件相談ほっとらいん」などの公的窓口をご利用ください。
残業代計算ツールでみなし時間内かを確認する