給料の「引かれるお金」がぜんぶわかる

最終更新: (労働基準法39条・115条・附則143条ほかに対応)

有給休暇の繰り越しは何年?——時効2年・前年分までのルールと「3年」との違い

結論: 有給休暇の繰り越しとは、その年度に使い切れなかった分を翌年度に持ち越すことです。年次有給休暇を取得する権利の時効は2年なので、繰り越せるのは基本的に前年度に付与された分までで、付与から2年が経つと時効で消滅します。就業規則で「繰り越さない」と定めても、法律上の権利は消えません。よく混同されますが、「賃金の請求権の時効(当分の間3年)」とは別のルールで、有給の繰り越し・時効は2年で考えます。この記事は、繰り越しの数え方・「3年」との違い・計算上の最大日数までを整理します。

30秒でわかる「有給休暇の繰り越し」

繰り越しとはその年度に使い切れなかった有給を翌年度へ持ち越すこと
何年繰り越せる?取得する権利の時効は2年。繰り越せるのは基本的に前年度付与分まで
いつ消える?付与された日から2年が経過すると時効で消滅
混同注意賃金の請求権は当分の間3年。有給(休む権利)は2年で別ルール
就業規則で「繰り越さない」法律上の権利は消えない(時効2年までは有効)
計算上の最大当年度20日+前年度繰越20日=最大40日(上限の目安)

自分の付与日数の目安は有給休暇日数の計算ツール付与日数の早見表で概算できます。制度の全体像は有給休暇とは(基本のまとめ)をどうぞ。

1. 有給休暇の繰り越しとは——使い切れなかった分を翌年度へ

有給休暇は、勤続年数や勤務日数に応じて毎年付与されます。その年度に付与された有給を全部使い切れなかった場合、残った分は翌年度に持ち越して使えるのが原則です。これを繰り越しといいます。「今年もらった有給を使い切れなかったから、来年に回す」というイメージです。

ただし、いつまでも無制限にためられるわけではありません。次で見るように、有給を取得する権利には2年の時効があり、繰り越せる期間はこの時効で区切られます。

2. 繰り越せるのは何年分?——時効は2年

年次有給休暇を取得する権利の時効は2年です。付与された日から2年間は有効で、その間に使わなかった分は翌年度に繰り越せますが、2年が経過すると時効で消滅します。

言い換えると、ある時点で使える有給は、おおむね「その年度に付与された分」と「前年度に付与されて繰り越した分」までということになります。2年より前に付与された分は、順に時効で消えていきます。時効の根拠は労働基準法第115条で、「災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く)」の時効を2年としており、有給休暇を取得する権利はこれに当たると整理されています。

3. 具体例で見る繰り越し(付与日数はツールの計算値)

数字で見ると分かりやすくなります。以下の付与日数は、当サイトの計算ツールと同じ法定の付与日数(フルタイムで所定の出勤率を満たす場合)を使っています。

タイミングできごとその時点で使える日数
勤続2年6か月この年に12日付与。5日取得し、7日残った残り7日
勤続3年6か月新たに14日付与。前年の残り7日を繰り越し14日+繰越7日=21日
その1年後繰り越した7日(2年6か月時点の付与分)は付与から2年で時効使わなければ7日は消滅

このように、繰り越し分は「翌年度の付与分に上乗せして使える」一方で、付与から2年で時効消滅する点がポイントです。上の12日・14日は勤続年数に応じた法定の付与日数(2年6か月=12日、3年6か月=14日)で、実際の日数は勤務日数や出勤率によって変わります。自分の付与日数は計算ツール早見表で概算できます。

※パート・アルバイトで勤務日数が少ない場合は、付与日数が異なる「比例付与」になります。くわしくはパート・アルバイトの有給休暇(比例付与)をご覧ください。

4. 「賃金の請求権は3年」との混同に注意

繰り越しでもっとも間違えやすいのが、「時効は3年では?」という混同です。労働基準法では、賃金の請求権の時効が当分の間3年とされています(本来は5年で、附則で当分の間3年に読み替え)。この「3年」を有給休暇にも当てはめてしまう誤解がよく起きます。

しかし、3年になるのは「賃金の請求権」、つまり残業代のようにお金を請求する権利の話です。一方、有給休暇を取得する権利は「休む権利」であり、時効は2年のままです。附則で3年に読み替えられるのは賃金の請求権に限られ、有給休暇を取得する権利には及びません。

権利時効
年次有給休暇を取得する権利(休む権利)2年
賃金の請求権(残業代など・お金の権利)当分の間3年

残業代など賃金の請求権の時効(当分の間3年)については残業代の計算ツールや関連記事もあわせてご覧ください。有給の繰り越しは「2年」で考える、と覚えておくと混同を防げます。

5. 就業規則で「繰り越さない」と決められる?——権利は消えない

「うちの会社は有給を繰り越せない決まりだから」と言われることがあります。しかし、就業規則で「翌年度には繰り越さない」と定めても、法律上の年次有給休暇の権利そのものは消滅しないと厚生労働省は案内しています。

年次有給休暇は労働基準法で保障された権利で、時効の2年が経過するまでは有効です。法律を下回る就業規則の定めは、その部分について効力を持たないと考えられます。したがって、時効前の繰り越し分を「規則で繰り越せない」として一方的に消すことは、原則としてできないことになります。取り扱いに疑問があるときは、就業規則を確認したうえで、労働基準監督署などの公的窓口に相談すると確実です。

6. 最大で何日ためられる?——計算上は最大40日

「繰り越すと最大で何日になるのか」もよくある疑問です。法律上の付与日数は勤続年数に応じて増え、フルタイムで勤続6年6か月以上になると、1年あたりの付与日数は20日で頭打ちになります。時効は2年なので、計算上は次のようになります。

その年に付与された最大20日 + 前年度から繰り越した最大20日 = 最大40日

つまり、計算上は最大で40日を保有し得る、というのが一つの目安です。ただしこれはあくまで上限の考え方で、実際に何日残っているかは取得状況や付与日数によって変わります。40日ぶんの残日数がある状態は、有給がかなり使えていないサインでもあります。ため込む前に、次で触れる年5日の取得義務なども活用して、計画的に消化していくのがおすすめです。

7. ためこむ前に——年5日は会社の義務・計画的に消化を

有給をため込みすぎて時効で消してしまうのは、もったいない使い方です。これを防ぐしくみとして、年10日以上付与される労働者には、会社が年5日を取得させる義務があります(2019年4月〜)。自分で取得した日数はこの5日に算入されます。

くわしくは有給休暇の年5日取得義務とは(2019年義務化)をどうぞ。実際に休む(消化する)ときの考え方は有給休暇の消化とはで、使い切れない分の買取については有給休暇の買取は違法?で整理しています。

8. 迷ったときの公的な相談窓口

「繰り越したはずの有給が消えている」「繰り越せないと言われた」と感じたときは、次の公的窓口で相談できます。いずれも無料で、匿名での相談も可能です。

受付時間などの最新情報は、各窓口の公式ページでご確認ください。当サイトは相談の受付や個別のあっせん・代行は行っていません。

9. 次に確認したいこと

よくある質問

Q. 有給休暇は何年繰り越せますか?
年次有給休暇を取得する権利の時効は2年です。そのため、その年度に使い切れなかった分は翌年度に繰り越せますが、付与された日から2年が経過すると時効で消滅します。言い換えると、繰り越せるのは基本的に前年度に付与された分までで、それより前の分は消えていくと考えると分かりやすいです。就業規則で「翌年度に繰り越せない」と定めても、法律上の権利は消滅しないと厚生労働省は案内しています。
Q. 有給休暇の繰り越しと賃金の時効「3年」は同じですか?
別のルールなので混同に注意が必要です。労働基準法では、賃金の請求権の時効が当分の間3年とされていますが、これは残業代など「お金を請求する権利」の話です。一方、年次有給休暇を取得する権利は「休む権利」で、時効は2年のままです。附則で3年に読み替えられるのは賃金の請求権であって、有給休暇を取得する権利には及びません。したがって、有給の繰り越し・時効は2年で考えます。
Q. 有給休暇は最大で何日ためられますか?
法律上の付与日数は勤続年数に応じて増え、フルタイムで勤続6年6か月以上になると1年あたりの付与日数は20日で頭打ちになります。時効は2年なので、計算上は、その年に付与された最大20日と、前年度から繰り越した最大20日を合わせて、最大で40日を保有し得ます。ただしこれは上限の目安で、実際に何日残っているかは取得状況や付与日数によって変わります。自分の付与日数は計算ツールや早見表で概算できます。
Q. 就業規則で「繰り越さない」と決められていたら有給は消えますか?
就業規則で「翌年度には繰り越さない」と定められていても、法律上の年次有給休暇の権利そのものは消滅しないと厚生労働省は案内しています。年次有給休暇は労働基準法で保障された権利で、時効の2年が経過するまでは有効です。就業規則の定めが法律を下回る場合、その部分は効力を持たないと考えられます。取り扱いに疑問がある場合は、就業規則を確認したうえで、労働基準監督署などの公的窓口に相談すると確実です。
Q. 繰り越した有給と新しく付与された有給はどちらから使われますか?
繰り越した古い有給と、その年に新しく付与された有給のどちらから消化するかは、法律で一律に決まっているわけではなく、就業規則の定めによります。時効が近い繰り越し分から先に使う取り扱いにしておくと、時効による消滅を防ぎやすくなります。自分の会社がどちらのルールかは就業規則で確認できます。定めがはっきりしない場合は、会社に確認しておくと、繰り越し分を無駄にしにくくなります。

参考にした情報(一次情報・取得日2026年7月22日〜23日)

※本文中の付与日数(勤続2年6か月=12日、3年6か月=14日、上限20日)は、労働基準法39条の法定付与日数(フルタイムで所定の出勤率を満たす場合)です。実際の日数は勤務日数・出勤率により異なります。制度・通達は変わる可能性があるため、最新の内容は厚生労働省・お近くの労働基準監督署でご確認ください。

本記事は一般的な制度の解説です(2026年7月時点。労働基準法および厚生労働省・労働局の公表資料に基づく概算・目安)。個別の有給休暇の繰り越し・時効・残日数を判定するものではありません。実際の取り扱いは就業規則や勤務状況により異なり、判断に迷う場合は労働基準監督署などの公的窓口にご相談ください。個別のご相談には対応していません。
有給休暇日数の計算ツールで自分の付与日数を概算する