給料の「引かれるお金」がぜんぶわかる

最終更新: (労働基準法39条・115条ほかに対応)

有給休暇の買取は違法?——原則できない理由と例外3類型を確度を分けて解説

結論: 有給休暇の買取は、原則としてできません。労働基準法が有給休暇を「与えなければならない」と定めており、金銭を支払っても「休ませた」ことにはならないためです。あらかじめ買い取る約束をして取得できる日数を減らすこと(買上げの予約)も認められません。例外的に扱われ得る類型は3つ語られますが、公的資料で「買取ができる」とはっきり確認できたのは①法定を上回る上乗せ付与分だけです。②時効で消えた分・③退職時の未消化分は実務で広く行われるものの、会社が任意で行うもので、労働者に買取を請求する権利があるわけではないと考えられます。この記事は、どこまでが確かでどこからが実務慣行なのかを、確度を分けて整理します。

30秒でわかる「有給休暇の買取」

原則買取は原則できない(有給は「与えなければならない」もの)
理由金銭を払っても休暇を与えたことにはならないため
買上げの予約禁止。予約で取得できる日数を減らすことはできない
例外①上乗せ付与分公的に確認できる例外。法定日数を上回る分は買取して差し支えないと案内
例外②時効消滅分実務では見られるが公的原典は未確認。会社の任意で、請求権はない
例外③退職時の未消化分実務では広く行われるが公的原典は未確認。会社の任意で、請求権はない
税金扱いは個別性が高い→税務署・税理士へ(本記事では断定しません)

その前に、まず自分が何日もらえるかを有給休暇日数の計算ツールで概算できます。制度の全体像は有給休暇とは(基本のまとめ)、実際に休む(消化する)方は有給休暇の消化とはをどうぞ。

1. 買取は「原則できない」——なぜ違法とされるのか

有給休暇の買取とは、休むかわりに会社がお金を払い、その分の有給を消してしまう取り扱いのことです。結論として、有給休暇の買取は原則としてできません。労働基準法は有給休暇について「与えなければならない」と定めており、金銭を支払っても、休暇を与えたことにはならないと整理されているためです。

有給休暇は「まとまった休みを取って心身を休める」ための権利です。お金で買い取って消してしまうと、その目的が果たせなくなります。だからこそ、原則として金銭による解消は認められていない、という考え方です。この点は、鹿児島労働局の「年次有給休暇 よくあるご質問」でも、有給休暇は与えなければならないものであり、金銭を支給しても与えたことにはならないと案内されています。

2. 「買上げの予約」も禁止——先に約束して日数を減らせない

買取が原則できないことに関連して、「買上げの予約」も認められません。買上げの予約とは、実際に休む前の段階で「使わなかった有給は買い取る」とあらかじめ約束し、その分だけ請求できる有給の日数を減らしてしまうような取り扱いです。

同じ公的な案内でも、買上げの予約をして請求できる年次有給休暇の日数を減らしたり、請求された日数を与えなかったりすることはできないと示されています。つまり「最初から買い取る前提にして、休ませない」という運用は認められない、ということです。有給はあくまで実際に休むための制度であり、金銭精算を前提に権利をあらかじめ削ることはできない、と理解しておくとよいでしょう。

3. 例外として語られる3類型——ただし「確かさ」が違う

「原則できない」とはいえ、実務では買取が語られる場面が3つあります。ただし、公的資料ではっきり確認できるものと、実務慣行として広く行われているものが混ざっているため、確度を分けて整理します。ここを混同すると「退職時は必ず買い取ってもらえる」といった誤解につながりかねません。

類型内容確かさ(この記事での整理)
①法定を上回る上乗せ付与分会社が法律の定めより多く付与している「上乗せ」部分公的に確認できる例外。この分は買取して差し支えないと案内
②時効で消滅した分2年の時効が過ぎて消えた分を金銭で精算する実務では見られるが公的原典は未確認。会社の任意で、請求権はない
③退職時の未消化分退職で使い切れず残った分を精算する実務では広く行われるが公的原典は未確認。会社の任意で、請求権はない

① 法定を上回る「上乗せ付与分」——公的に確認できた例外

労働基準法が定める日数(勤続年数や勤務日数に応じた法定の付与日数)を上回って、会社が独自に上乗せ付与している分については、買取をしても差し支えないと公的な案内で示されています。法律が守るべき最低ラインを超えた「会社の上乗せサービス」の部分なので、金銭に換えても法律が守ろうとした休む権利を損なわない、という整理です。自分が法定より多く付与されているかは、まず計算ツールで法定の付与日数を概算し、就業規則の付与日数と見比べると分かりやすくなります。

② 時効で消滅した分——実務では見られるが「請求できる権利」ではない

年次有給休暇を取得する権利の時効は2年で、2年が経過すると消滅します。この「消えてしまった分」を、会社が好意で金銭精算するケースは実務で見られます。ただし、今回参照した公的資料の範囲では、時効消滅分の買取について明確な原典を確認できていません。取得機会がすでに失われた分なので買取が休む権利の妨げにならない、という実務上の説明はよくなされますが、これは慣行・解釈であって、労働者が会社に「時効分を買い取れ」と請求できる権利があるわけではないと考えられます。時効そのものの考え方は有給休暇の繰り越し(時効2年)で詳しく整理しています。

③ 退職時の未消化分——実務では広く行われるが、あくまで会社の任意

退職で使い切れずに残った有給を、会社が精算するケースは実務では広く行われています。退職後には有給を取れる日がもう存在しないため、金銭精算しても休む権利を妨げないという説明がなされます。ただし、これも今回の公的資料の範囲では明確な原典を確認できておらず、会社が任意で行う取り扱いと考えるのが安全です。退職時に買い取ってもらう権利が常にあるわけではないため、まずは退職日までに残った有給を消化できないかを確認し、そのうえで買取の可否を会社に確認するのが順番として確実です。

※②③は「実務で広く行われている」ことと「法律上の請求権がある」ことは別、という点が大切です。会社に制度があれば精算される可能性はありますが、なければ買取を強く求められるとは限りません。個別の可否は就業規則の確認と、労働基準監督署などの公的窓口への相談が確実です。

4. 「買い取ってもらえる」と当てにしすぎない——基本は消化

ここまでを整理すると、有給の買取は原則できず、労働者から請求できる権利も基本的にないことになります。実務で買取が行われる場合も、それは会社が任意で行うものです。そのため、「どうせ最後に買い取ってもらえる」と当てにして有給をため込むのは、あまりおすすめできません。

有給は本来、休むための権利です。使い切れないほど残りそうなときは、買取を求めるより、年5日の取得義務や、退職前のまとまった消化などを使って、実際に休んで取得することを先に検討するのが基本です。当サイトでは、買取の「相場」やあっせん・代行のような案内は行っていません。

5. 買取代金の税金は?——個別性が高く、ここでは断定しません

「もし買い取ってもらえた場合、その代金に税金はかかるのか」も気になる点だと思います。ただし、買取代金の税金の取り扱いは、在職中の支給か退職に伴う支給か、どのような性質の支給として扱われるかなどによって変わり、個別性が高い部分です。

当サイトは「数字は一次情報で確認できた範囲だけを載せる」方針のため、買取代金の課税区分や税額をこの記事で断定することはしません。実際の課税関係は、税務署や税理士などの専門の窓口で、ご自身の状況にあわせて確認してください。給与全体の手取りの考え方は手取りの計算ツール(トップ)で概算できます。

6. 迷ったときの公的な相談窓口

「退職時の未消化分を買い取ってもらえるか分からない」「買上げの予約で有給を減らされている気がする」と感じたときは、次の公的窓口で相談できます。いずれも無料で、匿名での相談も可能です。

受付時間などの最新情報は、各窓口の公式ページでご確認ください。当サイトは相談の受付や個別のあっせん・代行は行っていません。

7. 次に確認したいこと

よくある質問

Q. 有給休暇の買取は違法ですか?
有給休暇の買取は原則としてできません。労働基準法は有給休暇を「与えなければならない」と定めており、金銭を支払っても休暇を与えたことにはならないためです。あらかじめ買い取る約束(買上げの予約)をして取得できる日数を減らしたり、請求された日数を与えなかったりすることもできません。例外として、法律の定めを上回って上乗せ付与された分については、この限りではないと公的な案内で示されています。
Q. 退職時に残った有給休暇は買い取ってもらえますか?
退職時に残った未消化分を会社が買い取る取り扱いは、実務では広く行われています。ただし、これは会社が任意で行うもので、労働者の側に買取を請求できる権利があるわけではないと考えられます。今回参照した公的資料の範囲で買取が認められると明確に確認できたのは、法律の定めを上回って上乗せ付与された分までです。まずは残った有給を退職日までに消化できないかを確認し、買取の可否は就業規則と会社への確認、必要に応じて労働基準監督署などの公的窓口で確認するのが確実です。
Q. 時効で消えた有給休暇は買い取ってもらえますか?
年次有給休暇を取得する権利の時効は2年で、2年が経過すると消滅します。時効で消滅した分を会社が金銭で精算する取り扱いは実務で見られますが、これも会社が任意で行うもので、労働者に買取を請求できる権利があるわけではないと考えられます。今回参照した公的資料の範囲で買取が認められると明確に確認できたのは、法律の定めを上回って上乗せ付与された分までで、時効消滅分の買取について公的な原典は確認できていません。個別の取り扱いは就業規則と会社への確認、労働基準監督署などの公的窓口で確認してください。
Q. 会社に有給の買取を請求できますか?
有給休暇の買取は原則としてできず、労働者が会社に買取を請求できる権利は基本的にありません。有給休暇は「休むための権利」であり、金銭に換えることを前提とした制度ではないためです。実務で買取が行われる場合も、それは会社が任意で行うものです。有給が使い切れそうにないときは、買取を求めるより、年5日の取得義務や退職前の消化などを使って、まず実際に休んで取得することを検討するのが基本になります。
Q. 有給の買取代金に税金はかかりますか?
有給休暇の買取代金にかかる税金の取り扱いは、その支給が在職中か退職に伴うものか、どのような性質の支給として扱われるかなどによって変わり、個別性が高い部分です。当サイトでは一次情報で確認できた範囲を超える税額や区分の断定は行っていません。買取代金の課税関係については、税務署や税理士などの専門の窓口で、ご自身の状況にあわせて確認してください。

参考にした情報(一次情報・取得日2026年7月22日〜23日)

※本記事では、公的資料で明確に確認できた例外を「①法定を上回る上乗せ付与分」までとし、②時効消滅分・③退職時の未消化分については、実務で行われるものの公的な原典を確認できていないため「会社の任意であり、請求できる権利ではない」と確度を分けて記載しています。買取代金の税金の取り扱いは個別性が高いため、本記事では断定していません。制度・通達は変わる可能性があるため、最新の内容は厚生労働省・お近くの労働基準監督署でご確認ください。

本記事は一般的な制度の解説です(2026年7月時点。労働基準法および厚生労働省・労働局の公表資料に基づく概算・目安)。個別の有給休暇の買取の可否・退職時の取り扱い・買取代金の課税関係を判定するものではありません。実際の取り扱いは就業規則や勤務状況、個別事情により異なり、判断に迷う場合は労働基準監督署・税務署などの公的窓口や専門家にご相談ください。個別のご相談には対応していません。
有給休暇日数の計算ツールで自分の付与日数を概算する