給料の「引かれるお金」がぜんぶわかる

最終更新: (令和8年分・国税庁質疑応答事例/タックスアンサーNo.1122に基づく)

不妊治療は医療費控除の対象?——自己負担分は対象・助成金は差し引く仕組み

結論から言うと、医師による診療等の対価として支払う不妊症の治療費や人工授精の費用は、医療費控除の対象になります。保険が適用される治療でも、窓口で払った自己負担分が対象です。一方で、自治体の助成金や、高額療養費・保険給付などで補填された分は、医療費控除の計算で差し引きます(=支払った医療費から補填を引いた金額が計算のもと)。この記事では、国税庁が示す区分にそって「何が対象か」「補填はどう扱うか」を整理します(金額の相場は国税庁に基準がないため示しません)。

はじめに:ポイントは「自己負担分は対象/補填は差し引く」

不妊治療の医療費控除でつまずきやすいのは、助成金や高額療養費などの「補填」をどう扱うかです。医療費控除は「支払った医療費」から「補填される金額」を差し引いて計算します。まずこの「自己負担分は対象/補填は差し引く」という骨組みを押さえておくと、迷いにくくなります(2026年7月24日取得の国税庁情報に基づきます)。

まず制度全体を知りたい方は医療費控除とは(仕組み・いくらから・いくら戻る)を、対象・対象外の全体像は医療費控除の対象・対象外一覧をご覧ください。

1. 対象——不妊症の治療費・人工授精の費用(国税庁の逐語)

国税庁の質疑応答事例「不妊症の治療費や人工授精の費用」は、次のように述べています(逐語・2026年7月24日取得)。

医師による診療等の対価として支払われる不妊症の治療費及び人工授精の費用は、医療費控除の対象となります。

医療費控除の対象は、そもそも「医師又は歯科医師による診療又は治療の対価」です(国税庁 No.1122)。不妊症の治療や人工授精は、この「医師による診療等の対価」にあたるため対象になります。保険が適用される治療でも、窓口で支払った自己負担分は対象です。

◯ 対象医師による診療等の対価として支払う不妊症の治療費・人工授精の費用(保険適用の治療は窓口の自己負担分)
差し引くもの自治体の不妊治療費の助成金/高額療養費/保険給付など、補填される金額(次章)

なお、体外受精や顕微授精などの個別の術式について、国税庁は名称ごとに可否を一覧化していません。医師による診療等の対価であれば同じ考え方で対象になり得ますが、本記事では個別の術式の可否を断定しません。判断に迷う場合は税務署にご確認ください。

2. 助成金・補填は「差し引く」——二重に得をしない仕組み

自治体から不妊治療の助成金を受け取った場合、その助成金は「保険金などで補填される金額」にあたります。国税庁の質疑応答事例と東京国税局の文書回答事例は、医療費控除の計算のときに、支払った医療費から助成金の額を差し引くと示しています(2026年7月24日取得)。

つまり、「支払った不妊治療費 − 受け取った助成金など」の金額が、医療費控除の計算のもとになります。実際に負担していない部分(補填された分)まで控除の対象にはできない、という仕組みです。同じ考え方で、高額療養費健康保険からの給付で戻ってきた分も差し引きます。出産の場面での出産育児一時金を差し引くのと同じ「補填の差し引き」の考え方です。

窓口の負担が高額になったときの上限のしくみは高額療養費制度とはで、実際の上限額の目安は高額療養費シミュレーターで確認できます。出産の費用と補填の扱いは出産手当金とはもあわせてご覧ください。

3. 保険が適用される不妊治療のときの考え方

不妊治療の一部は公的医療保険が適用されます。保険が適用される治療でも、医療費控除の考え方はシンプルです。

どの治療が保険適用になるか、適用の範囲や条件といった制度の詳細は税の話ではなく、医療保険の制度側の話です。適用の可否や範囲は、制度を所管する窓口や医療機関でご確認ください。手取りナビは税の観点から、「自己負担分は対象・補填は差し引く」という医療費控除の一般的な考え方をお伝えしています。

4. 「不妊治療は◯◯万円が相場」という金額は載せていません(理由)

医療費控除で対象になるのは、「その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分」とされています(No.1122・逐語)。国税庁は不妊治療費の相場や「いくらまでなら対象」という金額の目安を定めていません。判断されるのは金額そのものではなく、医師による診療等の対価かどうかです。

そのため本記事では、根拠のない相場金額は示していません。実際に戻る税額を知りたい場合は、その年に支払った医療費の合計から、助成金・高額療養費・保険給付などの補填を差し引いた額をもとに、シミュレーターで目安を確認するのが確実です。

🧮 補填を差し引いた医療費の合計から「いくら戻るか」の目安を試算する(医療費控除シミュレーター)

5. 迷ったときの確認先・次に読みたい記事

よくある質問

Q. 不妊治療の費用は医療費控除の対象になりますか?
医師による診療等の対価として支払う不妊症の治療費や人工授精の費用は対象です(質疑応答事例)。保険が適用される治療でも、窓口で支払った自己負担分は対象です。個別の可否は治療の内容によって変わるため、判断に迷う場合は税務署にご確認ください。
Q. 自治体の不妊治療の助成金を受け取った場合はどうなりますか?
自治体から支給される不妊治療費の助成金などは、「保険金などで補填される金額」として、医療費控除の計算のときに支払った医療費から差し引きます(質疑応答事例・東京国税局 文書回答事例)。支払った医療費から助成金の額を差し引いた金額をもとに、医療費控除を計算します。
Q. 保険が適用される不妊治療でも医療費控除は受けられますか?
保険が適用される不妊治療でも、窓口で支払った自己負担分は対象です。一方、高額療養費や保険給付、自治体の助成金などで補填された分は差し引きます。保険適用の範囲や対象となる治療の詳細は、制度を所管する窓口や医療機関でご確認ください。
Q. 体外受精や顕微授精も対象になりますか?
国税庁の質疑応答事例は「不妊症の治療費」「人工授精の費用」を対象として示しています。体外受精など個別の治療についても、医師による診療等の対価であれば同じ考え方で対象になり得ますが、国税庁は個別の術式ごとに可否を一覧化していません。本記事では個別の術式の可否を断定しません。判断に迷う場合は税務署にご確認ください。
Q. 不妊治療で戻る金額の目安はどのくらいですか?
戻る金額は、その年に支払った医療費の合計(助成金や保険給付などの補填を差し引いた額)や所得によって変わります。国税庁は費用の相場を定めていないため、本記事では相場金額を示していません。戻る税額の目安は、差し引き後の医療費の合計をもとにシミュレーターで概算できます。

参考にした一次情報(取得日2026年7月24日)

本記事は一般的な制度の解説です(2026年7月24日時点。国税庁質疑応答事例・タックスアンサーに基づく)。不妊症の治療費・人工授精の費用は医療費控除の対象ですが、本記事は国税庁が示す代表的な区分の説明で、個別の術式・ケースの可否を断定するものではありません。同じ費用でも、医師による診療等の対価かどうかや補填の有無など個別の事情によって扱いが変わります。保険適用の範囲など制度の詳細は医療保険の制度側の話で、所管する窓口や医療機関でご確認ください。個別の可否の最終判断は、税務署や国税庁の確定申告書等作成コーナーでご確認ください。医療費控除でいくら戻るかの目安はシミュレーターで確認できます(金額はすべて概算・目安です)。個別のご相談には対応していません。
医療費控除シミュレーターで戻り額の目安を見る