給料の「引かれるお金」がぜんぶわかる

最終更新: (労働基準法39条5項に対応)

有給休暇の理由は必要?——会社に聞かれたときの答え方と「私用」の伝え方

結論: 有給休暇を取るのに、理由を会社に伝える義務はありません。労働基準法39条5項は「使用者は……有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない」と定めていて、理由の申告を取得の条件にしていません。会社にできるのは、その日に休まれると事業の正常な運営に支障が出る場合に日をずらしてもらう「時季変更権」だけで、理由の内容を理由に取得を拒否することはできません。だからこそ、言いたくない理由を作って伝える必要はなく、「私用のため」で足ります。この記事で、その根拠と、聞かれたときの落ち着いた答え方を整理します。

30秒でわかる「有給の理由」

理由は必要?法律上、取得の理由を伝える義務はない(労働基準法39条5項に理由の要件なし)
会社は断れる?理由を理由には断れない。あるのは日をずらす時季変更権だけ
聞かれたら?正直に答える義務も詳しく話す義務もない。伝える範囲は自分で決めてよい
何と言えばいい?「私用のため」「家庭の都合」で足りる。事実でない理由を作る必要はない
時季変更権とは繁忙期など正常な運営を妨げる場合に別の日へずらすだけ(取得拒否ではない)
取りにくいとき記録を残して労働基準監督署の総合労働相談コーナーなどの公的窓口へ

そもそも自分が何日の有給を持っているかを知りたいときは有給休暇の付与日数計算ツールで、制度の全体像は有給休暇とは(条件・日数・使い方)で確認できます。

1. なぜ理由がいらないのか——条文には「理由」が出てこない

有給休暇(正式には年次有給休暇)は、労働基準法39条が定める労働者の権利です。取得のルールを定めた39条5項は、次のように書かれています(条文の要旨)。

使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。

ここには「理由」という言葉がひとつも出てきません。つまり、理由を伝えることは有給を取るための条件になっていないということです。有給の使い道は労働者の自由で、病気でも私用でも旅行でも、目的によって取得の可否が変わることはありません。会社に与えられているのは、後半の「ただし書」にある、日をずらしてもらう権利(時季変更権)だけです。

2. 会社が持つのは「時季変更権」だけ——取得の拒否はできない

会社(使用者)にできるのは、あなたが請求した日に休まれると事業の正常な運営に支障が出る場合に限り、別の日に変更してもらうことです。これを時季変更権といいます(39条5項ただし書)。ポイントは、これが「いつ取るか(時季)」を変えてもらうだけの権利であり、取得そのものを拒否する権利ではないことです。

また、時季変更が認められるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」という客観的な事情があるときに限られます。単に「忙しい」という漠然とした理由や、まして「休む理由が気に入らない」といった判断で取得を断ることはできません。法律の建て付け上、会社に取得の可否を決める「認否権」はなく、あるのは時季をずらす権利だけだと理解しておくと、やり取りに迷いにくくなります。

なお、退職前に残った有給をまとめて消化したい場合も、退職日を超えて日をずらすことはできないため、退職日までの消化は原則認められます。くわしくは有給休暇の消化(退職前の使い方)で解説しています。

3. 理由を聞かれたときの答え方——「私用のため」で足りる

実際には、申請のときに上司から「どうして休むの?」と聞かれる場面もあります。会社が取得予定を確認すること自体はありますが、前述のとおり理由の内容で取得の可否は変わらないため、正直に答える義務も、詳しく説明する義務もありません。伝える範囲は、あなた自身が決めて構いません。

言いたくない事情があるときの現実的な答え方は、「私用のため」「所用のため」「家庭の都合で」といった一般的な言い方です。申請書やシステムに理由の記入欄があるときも、差し支えのない範囲で「私用」と書けば足ります。制度上、これで取得を断られる筋合いはありません。

大切なのは、理由を言う必要がないのだから、事実でない理由を作ってまで伝える必要もないということです。嘘の理由は、あとで事実と食い違ったときに信頼関係を損なうリスクがあるだけで、そもそも負う必要のないリスクです。「私用のため」で足りる、と覚えておけば十分です。

4. それでも取りにくい・断られるときは

「理由を言わないと取らせない」と言われたり、正当な事情なく取得を繰り返し断られたりする場合は、まず事実を記録しておくことが役立ちます。いつ・どの日を申請し、どんな対応をされたか、就業規則の有給に関する定めはどうなっているか、といった情報を手元に整理しておきましょう。

そのうえで、お近くの労働基準監督署内の総合労働相談コーナーや、厚生労働省の「労働条件相談ほっとライン」などの公的窓口に相談できます。有給休暇は法律で定められた権利であり、年10日以上付与される人については、会社が年5日を取得させる義務も負っています(くわしくは下記の関連記事)。取得を不当に妨げられていると感じたら、一人で抱え込まず公的窓口を頼ってください。

年5日の取得義務については有給休暇の年5日取得義務(2019年4月〜)で解説しています。

5. 次に確認したいこと・相談先

よくある質問

Q. 有給休暇を取るのに理由は必要ですか?
法律上、取得の理由を会社に伝える義務はありません。労働基準法39条5項は、使用者は労働者が請求する時季に有給休暇を与えなければならないと定めており、理由の申告を取得の条件にしていません。使い道は労働者の自由で、目的によって取得の可否が変わることはありません。会社にあるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に日をずらしてもらう「時季変更権」だけで、取得そのものを拒否する権利はありません。
Q. 会社に有給の理由を聞かれたら、正直に答えないといけませんか?
正直に答える義務も、詳しく説明する義務もありません。会社が取得予定を確認すること自体はありますが、理由の内容によって取得の可否を決めることはできないため、伝える範囲はあなたが決めて構いません。実務上は「私用のため」「家庭の都合」といった一般的な言い方で足ります。理由を言いたくない場合に、事実でない理由を作って伝える必要はありません。
Q. 「私用のため」だけで有給は取れますか?
取れます。有給休暇は理由を問わず取得できる制度のため、「私用のため」「所用のため」といった伝え方で問題ありません。申請書やシステムに理由の記入欄がある場合も、差し支えのない範囲で「私用」などと記載すれば足ります。会社は理由が「私用」であることを理由に取得を断ることはできません。
Q. 会社は理由によっては有給を断れますか?
理由の内容を理由に断ることはできません。会社にできるのは、請求された日に休まれると事業の正常な運営に支障が出る場合に限り、別の日にずらしてもらう「時季変更権」の行使だけです(労働基準法39条5項ただし書)。これは取得を拒否するものではなく、あくまで時季を変更するもので、繁忙期など客観的に業務に支障が出る具体的な事情が必要とされます。「理由が気に入らない」といった判断で取得を拒否することはできません。
Q. 理由を言わないと取らせてもらえないときはどうすればいいですか?
就業規則や申請の記録(申請日・やり取り)を手元に整理したうえで、お近くの労働基準監督署内の総合労働相談コーナーや、厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」などの公的窓口に相談できます。有給休暇は労働基準法で定められた権利で、年10日以上付与される人には会社に年5日を取得させる義務もあります。取得を不当に妨げられていると感じる場合は、まず事実を記録しておくことが役立ちます。

参考にした情報(一次情報・取得日2026年7月23日)

※有給休暇の取り扱いは会社の就業規則によって法定を上回る定めがある場合があります。制度は変わる可能性があるため、最新の内容は厚生労働省・お近くの労働基準監督署でご確認ください。

本記事は一般的な制度の解説です(2026年7月時点。労働基準法および厚生労働省の公表資料に基づく概要・目安)。個別の有給休暇の取得の可否や会社とのやり取りは、勤務状況や就業規則により異なります。個別のご相談は、お近くの労働基準監督署内の総合労働相談コーナーや厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」などの公的窓口をご利用ください。当サイトは相談の受付や交渉の代行は行っていません。
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