最終更新: (2026年・令和8年分の税制に対応)
退職金の税金はいくら?——退職所得控除と計算方法を1ページで
結論: 退職金の税金は、給料とは分けて計算する「退職所得」としてかかり、負担は軽く設計されています。まず勤続年数に応じた退職所得控除を引き、残りの2分の1だけに所得税と住民税10%がかかります。長く勤めた人ほど控除が大きく、控除の範囲内なら税金は0円。この記事で計算の仕組みと具体的な金額を確認できます。
30秒でわかる退職金の税金
| 課税の区分 | 給料・ボーナスとは分ける「退職所得」(分離課税)。税負担は軽い |
|---|---|
| かかる税金 | 所得税(復興特別所得税込み)と住民税10%(市町村民税6%+道府県民税4%) |
| ステップ① | 退職所得控除を引く(勤続20年以下=40万円×年数、20年超=800万円+70万円×(年数−20)、最低80万円) |
| ステップ② | 課税退職所得金額 =(額面−退職所得控除)×1/2(1,000円未満切り捨て) |
| ステップ③ | この金額に所得税の速算表と住民税10%をかけて税額を計算 |
| 非課税 | 額面が退職所得控除の範囲内なら税金は0円(勤続30年なら1,500万円まで) |
自分の退職金・勤続年数での手取りは退職金の手取り計算ツールで1分で試算できます。
1. 退職金の税金は「別枠・軽め」に設計されている
退職金は、長年の勤労に対する報いであり、退職後の生活の元手になるお金です。そのため税制でも、給料やボーナスと同じ枠でまとめて課税するのではなく、「退職所得」という別枠で、税負担が軽くなるように計算されます(分離課税)。ポイントは大きく2つ、退職所得控除と2分の1課税です。
流れはシンプルです。①退職金の額面から勤続年数に応じた退職所得控除を引く → ②残った金額の2分の1を「課税退職所得金額」とする → ③その金額に所得税と住民税10%をかける。この3ステップで税額が決まり、額面からその税額を引いたものが手取りです。以下で1つずつ見ていきます。
2. 退職所得控除——勤続年数が長いほど大きくなる
退職所得控除額は勤続年数だけで決まります。計算式は次のとおりです。勤続年数に1年未満の端数があるときは1年に切り上げます(例:10年2か月→11年)。
| 勤続20年以下 | 40万円 × 勤続年数(計算結果が80万円未満のときは80万円) |
|---|---|
| 勤続20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年) |
勤続年数ごとの退職所得控除額をまとめると次のようになります。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 5年 | 200 万円 |
| 10年 | 400 万円 |
| 15年 | 600 万円 |
| 20年 | 800 万円 |
| 25年 | 1,150 万円 |
| 30年 | 1,500 万円 |
| 35年 | 1,850 万円 |
| 38年 | 2,060 万円 |
当サイトの計算エンジンによる算出(国税庁 No.1420 の計算式)。障害が直接の原因で退職した場合は、上の金額に100万円が加算されます。
3. 2分の1課税——残った金額の半分だけが課税対象
退職金の額面から退職所得控除を引いて、まだ金額が残った場合、その2分の1だけが課税の対象(課税退職所得金額)になります。計算式は次のとおりです(1,000円未満は切り捨て)。
課税退職所得金額 =(退職金の額面 − 退職所得控除額)× 1/2
たとえば退職金2,000万円・勤続30年なら、控除1,500万円を引いた残り500万円の半分、250万円が課税退職所得金額です。この「控除を引いてさらに半分」という二段構えのおかげで、退職金の税負担は同じ金額の給料に比べてかなり軽くなります。
※役員等としての勤続5年以下の「特定役員退職手当等」や、役員以外でも勤続5年以下の「短期退職手当等(控除後300万円を超える部分)」は、この2分の1が使えない場合があります。詳しくは6. 気をつけたいケースをご覧ください。
4. 税額の計算——所得税と住民税10%
課税退職所得金額が決まったら、そこに税金をかけます。所得税は所得の大きさに応じた速算表(復興特別所得税=102.1%を含む)、住民税は一律10%(市町村民税6%+道府県民税4%)です。実際に額面・勤続年数別の税額と手取りを計算すると次のようになります(いずれも「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出済みの一般的なケース)。
| 退職所得控除 | 課税退職所得 | 所得税 | 住民税 | 手取り | |
| 500万・勤続10年 | 400万 | 50万 | 25,525 | 50,000 | 4,924,475 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,000万・勤続20年 | 800万 | 100万 | 51,050 | 100,000 | 9,848,950 |
| 1,000万・勤続30年 | 1,500万 | 0 | 0 | 0 | 10,000,000 |
| 1,500万・勤続25年 | 1,150万 | 175万 | 89,337 | 175,000 | 14,735,663 |
| 2,000万・勤続30年 | 1,500万 | 250万 | 155,702 | 250,000 | 19,594,298 |
| 2,500万・勤続35年 | 1,850万 | 325万 | 232,277 | 325,000 | 24,442,723 |
金額はすべて当サイトの計算エンジン(国税庁の退職所得控除・速算表〔令和8年分〕、総務省の住民税10%に基づく確定計算)による算出です。所得税は復興特別所得税を含みます。概算・目安であり、実際の税額は個別の事情で異なります。
自分の退職金・勤続年数を入れた手取りは退職金の手取り計算ツールで確認できます。
5. 税金がかからないケース——控除の範囲内なら0円
退職金の額面が退職所得控除の範囲内に収まれば、課税退職所得金額は0円になり、所得税・住民税はどちらもかかりません。上の表でも、退職金1,000万円・勤続30年(控除1,500万円)は税金0円で、手取りは額面どおり1,000万円になっています。
非課税になる退職金の目安(勤続年数ごとの控除額まで)は次のとおりです。この金額を超えた分だけが、さらに2分の1にしてから課税されます。
| 勤続20年 | 退職金800万円まで非課税 |
|---|---|
| 勤続30年 | 退職金1,500万円まで非課税 |
| 勤続38年 | 退職金2,060万円まで非課税 |
控除額は当サイトの計算エンジンによる算出(国税庁 No.1420)。
6. 気をつけたいケース
- 「退職所得の受給に関する申告書」を出していないと税金が高くなる — この申告書を勤務先に提出していないと、退職所得控除も2分の1課税も適用されず、額面に一律20.42%が源泉徴収されます。あとから確定申告をすれば取り戻せます。詳しくは「退職所得の受給に関する申告書」とは?をご覧ください。
- 勤続5年以下は2分の1が使えないことがある — 役員等として勤続5年以下の「特定役員退職手当等」は控除後の全額が課税対象に、役員以外でも勤続5年以下の「短期退職手当等」は控除後300万円を超える部分に2分の1が使えません(国税庁 No.2737・No.2741)。
- iDeCo・企業型DCの一時金と近い年に受け取るとき — iDeCoや確定拠出年金などの一時金と、会社の退職金を近い年に受け取ると、退職所得控除の計算が調整され、受け取る順番や間隔によって税額が変わることがあります。仕組みが複雑で本記事の範囲を超えるため、該当する場合は勤務先・金融機関や国税庁・税務署で必ず確認してください。当サイトのツールはこの重複調整には対応していません。
7. 次に確認したいこと
- 自分の退職金の手取りを知りたい — 退職金の手取り計算ツール
- 申告書を出さないとどうなる?取り戻し方は? — 「退職所得の受給に関する申告書」とは?未提出だと20.42%源泉
- 退職前後のお金全体 — 失業保険シミュレーション / 「退職給付金」と失業手当の違い
- 手取りと額面の違い — 手取りとは?額面との違い
よくある質問
- Q. 退職金にはどんな税金がかかりますか?
- 所得税(復興特別所得税込み)と住民税がかかりますが、給料とは分けて計算する「退職所得」という区分で税負担が軽くなります。勤続年数に応じた退職所得控除を引き、残った金額の原則2分の1だけを課税対象にして、所得税の速算表と住民税10%をかけます。控除の範囲内なら税金はかかりません。
- Q. 退職所得控除はいくらですか?
- 勤続年数で決まります。勤続20年以下は「40万円×勤続年数」(80万円未満なら80万円)、20年超は「800万円+70万円×(勤続年数−20年)」です。1年未満の端数は1年に切り上げます。勤続10年は400万円、20年は800万円、30年は1,500万円、35年は1,850万円が控除額です。
- Q. 退職金1000万円・勤続30年の税金は?
- 勤続30年の退職所得控除額は1,500万円です。退職金1,000万円はこの範囲内なので課税退職所得金額は0円となり、所得税・住民税はかかりません。手取りは額面どおり1,000万円です。
- Q. 退職金の税金はどう計算しますか?
- ①退職所得控除額を勤続年数から求める、②課税退職所得金額=(額面−控除額)×1/2(1,000円未満切り捨て)、③所得税の速算表に復興特別所得税(102.1%)を加える、④住民税10%をかける、⑤額面から税額を引くと手取り、という流れです。退職金2,000万円・勤続30年なら税合計40万5,702円、手取り約1,959万円です。
- Q. 退職金で税金がかからないのはどんな場合?
- 額面が退職所得控除の範囲内に収まる場合です。勤続20年なら800万円まで、勤続30年なら1,500万円まで、勤続38年なら2,060万円までが非課税の目安です。超えた部分もさらに2分の1にしてから課税されるため、負担は軽くなっています。
参考にした情報(一次情報・取得日2026年7月22日)
- 国税庁 タックスアンサー「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」— 退職所得控除額の計算式(20年以下=40万円×年数〔最低80万円〕、20年超=800万円+70万円×(年数−20))・退職所得の金額=(収入−控除)×1/2・分離課税・勤続年数の1年未満切り上げ・障害退職の100万円加算。nta.go.jp
- 国税庁「退職所得の源泉徴収税額の速算表(令和8年分)」— 所得税(復興特別所得税込み)の税率・控除額。当サイトの計算エンジンが参照。nta.go.jp(PDF)
- 国税庁「No.2737 特定役員退職手当等」/「No.2741 短期退職手当等」— 勤続5年以下の2分の1課税の取扱い。No.2737 / No.2741
- 総務省「退職所得に対する住民税の特別徴収」— 市町村民税6%+道府県民税4%(各100円未満切り捨て)。soumu.go.jp
- 本記事の金額はすべて当サイトの計算エンジン(上記の公式な計算式・速算表に基づく確定計算)による算出値です。